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TP音楽とは?





TP音楽のアラトーリスタイルとは?
レニー・トリスターノ
バド・パウエル


コンピュータ音楽
TP音楽は、様々な特性のうちTPに集中する。ほとんどの音楽は、ある程度TPの特性を持っているかもしれないが、主には音高といった他の特性を強調する役割、また、あるプレイヤーのある演奏を特徴づけるという役割を果たしている。TP音楽においては、TPは音楽を構成するという重要な役割を果たす。

TP音楽のスタイルは、4beatベースに沿い一定のテンポに従って演奏される即興で無調の音楽スタイルである。TP音楽のアラトーリスタイルは、アラトーリが、レニー・トリスターノのオリジナルのピアノソロスタイルを継承し、発展させた。だが、心身の方法の面、またタイミングの揺らぎのコンセプトの面から言えば、バド・パウエルを起源とする。また、ギタリスト森田利久と共演した経験にも由来する。TP音楽のスタイルはソロキーボードに限るという理由はないから、別のTP音楽のスタイルも考えられるだろう。

TPは、タイミングの揺らぎを生み出す方法が必要とされているコンピュータ音楽にも適用されるだろう。しかし、TP音楽はコンピュータを、音楽を生み出すためではなく、リアルタイムレコーディングと分析のために使う。TP音楽は、人間のタイミング知覚を理解するための実験であり、数十年の訓練の後には、信頼できる実験データになるのである。








非記譜的タイミング




音楽の記号は次のように類別される。
  記譜的記号: 譜面に書かれる通常の音楽表記に対応する
    記譜的音高記号: A, A#, B, C等 (音高:ピッチ、音の高さのこと)
    記譜的音強記号: アクセント等 (音強:loudness、音の強さのこと)
    記譜的タイミング記号: 8分音符等
  非記譜的記号: 譜面には書き移すことができない
    非記譜的音高記号: ピアノとバイブラフォンは使うことができない
    非記譜的音強記号: MIDIデータでは、0-127として表される
    非記譜的タイミング記号: 同じく、0-479(0-239, 0-359 etc.)として表される。
非記譜的音高記号と非記譜的音強記号は、何かの音楽を構成する主要な役割を果たすことができるかどうか疑問だ。私が思うには、非記譜的タイミング記号は確かにその役割を果たす。
シンボル










微妙なタイミング?


対立

バド・パウエル
非記譜的タイミングは微妙なタイミングと似ているが異なる。前者は後者を含むが、後者は前者を含まない。非記譜的タイミングというのは、時間幅やズレが記譜的知覚が不可能なほど小さいということだけではなく、記譜的知覚が可能な時間幅であっても記譜的知覚を行わないで非記譜的知覚される、ということをも意味する。ここに記譜的知覚と非記譜的知覚との対立がある。TP音楽演奏者は、この対立を何とかすることを習慣づけなければならない。バド・パウエルを聞くとき、その基本的方法が理解できるだろう。バド・パウエルはジャズにおけるタイミング揺らぎの基礎である。





「タイミング・プログレッション」の「タイミング」は、記譜的タイミングではなくて、非記譜的タイミングを意味する。だから、timing progression はunnotated timing progression と、timing-progression.comはunnotated-timing-progression.comとしないといけない。しかし、それらはキーワードとするには長すぎるし、「unnotated」は耳慣れない用語であるので、カットされ略されている。非記譜的タイミングが記譜的タイミングを含むことを意味するわけではない。
Moreover, unnotated timing which I refer to is a part of that, that is systematized by TP.
さらに、私が言及する非記譜的タイミングは、その全てではなく一部であり、TPで組織化されるもののことである。

プロポーション

プロポーション
 ノーマル、
 リバースド、
 イーブン、
 バウンシング     バウンス

メインコンセプト

最も重要な非記譜的タイミングの特性は、「1組の8分音符のプロポーション」であり、1組の8分音符がどのようにバウンスするかを示している。普通、プロポーションは長い・短い、つまり1番目(表)の8分音符の長さ(*)は2番目(裏)の8分音符のそれより長い。それを「ノーマルバウンス(normal bounce)」と呼ぼう。それとは反対に、プロポーションが裏返って、短い・長いとき、それを「リバースドバウンス(reversed bounce)」と呼ぼう。また、だいたい同じときは、「イーブンバウンス(even bounce)」、明らかに長い・短いときは、「バウンシングバウンス(bouncing bounce)」と呼ぼう。

TPミュージシャンは、プロポーションや他の非記譜的タイミングの特性を操作することによって、音楽を分節し構成することができる。それはTPのメインコンセプトである。だから、TP音楽は連続した8分音符を必要とする。しかしスローテンポでは代わりに他の音符となる。

(*)音符の長さは、ここではノートオンタイミングから次の音のノートオンタイミングまでの長さを意味する。テクニカルな定義は「リサーチ」セクションで示される。ちなみにMIDI規格では、durationは、ノートオンタイミングからノートオフタイミングまでの長さと定義されている。
Mathematical definition,
   to Research


1組の8分音符のプロポーション
比率?



ビート長




Extended beat
プロポーションを比率と間違えるかもしれない。プロポーションは、
  53:47 49:51 55:45 61:39 (a)
のようなものではなく、
  50:44 47:49 55:45 66:44 (b)
のようなものである。固定された長さ(100)の1メトロノームビートの分割比率ではない。
前者の「不自然な」場合(a)、ビート長(pf+pb)は、100に固定されているが、後者の場合(b)、'94 96 100 110'と様々である。

エクステンディッドビートとは、そのビート長が前後のビートより相当長いビートのことである。それはまた重要な非記譜的タイミングの特徴である。
(a)
53+47=100
49+51=100
55+45=100
61+39=100
(b)
50+44=94
47+49=96
55+45=100
66+44=110


pf, pb, etc.
  cf. Proportion Figure 2



TP仮説1



バウンスはタイミング知覚の特徴を表現する。
TPの第一仮説は「バウンスとは何か?どうしてタイミング揺らぎが必要なのか?」に関してのものである。音楽音のタイミングに対する人間の知覚は、他のあらゆる知覚同様、その知覚自体に時間がかかるという特性を持っている。その時間(数十ミリ秒)は、知覚の方法や状況によって変わるだけでなく、各音のタイミング構造内の位置によっても変わる。

「知覚の方法や状況」には例えば、天候や月齢、春分秋分といった自然環境だけでなく、私たちの感情やイメージも含まれる。それら感情やイメージは知覚に対して積極的に関与するが、それは知覚の自己言及についての哲学的問題を呼び寄せる。「各音の位置」には例えば、表の8分音符か、裏の8分音符かだけでなく、連なりの中での各音の性格も含まれる。TPはタイミング揺らぎを通じてその知覚の特性を表現する。それがバウンスである。

注:
これがTPの第一仮説であり、数値的リサーチから、バウンスする方法などの実際の方法に至るまで、TPへの様々なアプローチを結び付けるものかもしれない。TP音楽を聞き演奏し研究することで、その知覚の様々な特性をクラス分けすることができるだろう。
TP仮説2

ズレではなくプロポーション。
8分音符に関する非記譜的タイミングの特性のうち、私達は、各々のタイミングのズレを聞くことはできないが、プロポーションを聞くことができる。だから、TPには、連続した8分音符が必要である。また、連続した8分音符は、notated timingが無意味化されることを意味する。



無意味化
TP仮説3




TPは再現不可能だがインプロビゼーション可能。
TPを即興演奏することは可能であるであるが、TPグラフを演奏することや、あらゆる前もって準備されたTPレシピに沿って演奏すること、TPを記憶し再現することは不可能だ。この仮説は、インプロビゼーションのアイデンティティ、つまりインプロビゼーション音楽は楽譜音楽と決定的に異なるか否か、またインプロビゼーションとは何か、という問いに答えるだろう。

注:
TPグラフとは、TPが書かれた「楽譜」のようなものであるが、通常の楽譜との区別をつけるために、TP「楽譜」とは言わずに、TPグラフと呼ぶ。
注:
音楽と言語は、構文論では似た性質を持つ(Languages of Art, Nelson Goodman)。それぞれnotational schemeを持つ。TPは別のschemeを申し立てる。この仮説は、言語世界の限界という問題と関連をもつ。
注:
タイミング遅れは、構造を分節するときや感情を表現するときに通常使われる。しかし、ミスタッチや不注意といった「偶然の」行為もその原因となる。通常の音楽では、この遅れは感情を込めたことにより、この遅れはミスタッチによる、というように遅れを恣意的に解釈、類別する。つまり、メロディやハーモニーのような高次の記号によって、その解釈を取るよう命令される。

TPは遅れの原因を問わない。例えば、不注意を感情の表現とみなす。だから、ミスタッチも構造を作る。これがインプロビゼーション音楽のTP形式化である。形式化は内容を問わない。従来の「感情」よ、さらば。私たちは、感情とミスタッチを区別できない。

「偶然の」という言葉は注意しなければ、オカルトを招く。少なくとも一時的に構造を作るならば、「偶然の」ではなく、構成的と呼ぶべきだ。TPという記号の元では組織化されるが、他のシステムの元では「偶然」と呼ばれるのである。

長い年月の後、以前は「偶然の」と扱っていた何かを、構成的として操作できるかもしれない。そうならば、私たちに必要なのはオカルトではなく、数十年の訓練だ。「偶然の」を「ミスタッチ」や「不注意」に置き換えても同様である。あるシステムでの「ミスタッチ」は、他のシステムではミスではなく巧妙さとなる。














偶然=感情





参照: ネルソン・グッドマン
TP仮説4

メロディの無意味化と一時的参照
記譜的音高記号は、非記譜的タイミング記号の知覚を侵害するので無意味化されなければならない。しかし、数秒の間有効な一時的参照のために必要である。

注:
グッドマン(「世界制作の方法」)が言うように、抽象芸術は主題を忌避して例示機能に目を向けさせる。私が思うに、主題があろうとも、例示機能の学習が進めば進むほど、より気付きにくい特性を把握できるようになるかもしれない。抽象絵画を十分に学習すれば、具象絵画を「抽象」絵画として見ることができるようになるかもしれない。音楽も同様に、わかりやすい記譜的特性に関わらず細部のニュアンスを感受できるようになるだろうか?しかし、仮説4によると、メロディ対非記譜的タイミングの場合、それはできない。
注:
例えば、TP音楽を録音後に、MIDIで音高を修正し、コードプログレッションを付けメロディを作ったらどうだろう。いくら非記譜的タイミングに合致するようにうまくメロディを作ったとしても、記憶可能性、再現可能性の観点から見て、構造の性質は全く異なるものになる。TPの構造は、はかないのだ。rigidな構造ははかない構造を侵害するのだ。
音符の連なり